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2007.05.20

こんなものは反占領闘争ではない

The ghostly streets, the ghostly skies
http://a-mother-from-gaza.blogspot.com/2007/05/ghostly-streets-ghostly-skies.html

Gazans trapped in 'ghost town'
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/00EDC05C-AE07-43A0-9A7B-6E4723F6F876.htm

A double Nakba in Gaza
http://electronicintifada.net/v2/article6903.shtml

Fresh violence hits Gaza (VIDEO 0:51)
http://news.bbc.co.uk/player/nol/newsid_6670000/newsid_6670000/6670027.stm?bw=nb&mp=wm

http://www.linktv.org/mosaic/20070518 (VIDEO)

Ceasefire ends Gaza killings (VIDEO 1:03)
http://news.bbc.co.uk/player/nol/newsid_6670000/newsid_6673400/6673413.stm?bw=nb&mp=wm

Israel air strikes - Cockpit view (VIDEO 1:13)
http://www.youtube.com/watch?v=FFjTvQbMBX4

LIVE in Gaza!! (VIDEO 2:16)
http://1158munich.blogspot.com/2007/05/al-jazeera-english-airs-exclusive.html

Gaza is a Virtual Ghost Town
http://benjaminheine.blogspot.com/2007/05/gaza-is-virtual-ghost-town.html

セクト主義暴力、
ガザの通りは、武装勢力が制圧し、
ガザはゴーストタウンになってしまっている。
しかも59回目のナクバの日にだ。

ガザでは抗議集会すらできないが、
西岸各地ではセクト主義暴力に対する抗議集会が開かれている。

ガザからイスラエル軍は撤退した。
もちろん、ガザに対する軍事的、経済的封鎖は続いている。
しかしガザ域内からはイスラエル軍は撤退した。
つまりガザ内には占領軍は実在しなくなった。

西岸では占領が続いており、占領地の占領軍に対する攻撃なら、
それは、テロではなく、レジスタンスだ。

西岸でのイスラエル軍の軍事攻撃に対して反攻するなら、
西岸で攻撃を行えばよい。
何故、西岸でのイスラエル軍の軍事行動に対する反攻が、
ガザからスデロットにカッサムを発射することなのだ。
こんな屁理屈は認められない。

反占領闘争とは、軍事行動がその全てではない。
反占領闘争にとって、軍事行動はその一部にしかすぎない。
占領軍がいなくなったガザに於ける反占領闘争のあり方は、
ガザへの軍事的、経済的封鎖への反対行動であり、
スデロットにカッサムを発射することではない。

①イスラエルの軍事施設だけを狙える精度などないのだから、
スデロットにカッサムを発射すること自体が無差別テロである。

②ガザ停戦合意以降のカッサム発射は停戦違反である。

③ナクバを前後する数日間にスデロットにカッサムを百発程度
発射したことには、全く何の大義もない。
それは、内部抗争を外部に転嫁することを狙ったものだと言っていいと思う。
占領と戦う勢力内の対立を、
何の関係もないイスラエルの一般市民を殺傷することにより、
イスラエルの侵攻を招き、内部対立を克服しようという手法だろう。
パレスチナの内部矛盾を外部に転嫁するという手口自体が誤っているし、
しかもその為にイスラエルの一般市民に
被害を与えても構わないという意味では、腐敗している。
内部矛盾の外部への転嫁は政治権力者の手法であり、
占領と戦う筈の勢力がこんな手法を使うべきではない。


そして思惑通り、イスラエル軍はガザを空爆し、
ガザに限定的な地上侵攻を行った。
共通の敵が眼前に侵攻して来たので、
内部抗争は一時的に収まるという訳だ。


何たる欺瞞!
何たる政治技術!
何たる腐敗!
何たる倒錯!


こんなことの為に苦しんでいるのは一体誰なのだ、
苦しんでいるのは、
スデロットの一般市民であり、
ガザの一般市民である。

占領軍のいないガザに占領軍を招き入れることを挑発し、
狙い通り占領軍を招き入れるとは、、、

これは、一体何なんだ?
占領軍を招き入れる反占領闘争とは論理矛盾だ。
占領軍を招き入れる挑発行為を反占領闘争などとは断じて呼べない。

こんなものは、反占領闘争でもなんでもない。
では一体何なんだろう?

反占領闘争ではない何かだ。
聖戦=ジハード主義か。
そうかもしれないが、
全面的戦争を望んでいる訳でもないだろう。
せいぜい限定的侵攻を想定しているのだろう。
つまり敵の理性に頼ってもいる。

だいたいカラシニコフとRPGしかないのに、
一体どうやってF16とアパッチとメルカバ戦車と戦うというだろう?
竹槍をB29に向けて突き出していた日本軍国主義の精神主義を彷彿とさせる。


私には地上侵攻したきたイスラエル軍が
あたかも平和維持軍のように見えてしまう。
非常に逆説的であり、非常に屈辱的なのだが、
地上侵攻したきたイスラエル軍以外にセクト主義暴力を止めるものは、
他にはなかったということは、客観的事実なのではないか。
パレスチナの大統領にも、首相にも、内相にも誰にも止められなかったのだから。


まさかイスラエルが両派の抗争を収束する為に
憎まれ役をかってでて、抗争を収束させたとは思わないが、
もしそうだと主張されても私にはそれを否定するものはない。
確かにイスラエルにとってもガザの治安悪化がイスラエルへの攻撃激化にまで
及ぶというイスラエルの安全保障にとって度を越えるのは黙過できないからだ。


残念ながら、これがパレスチナ解放闘争の偽らざる現状だ。
屈辱的だが、まずは現実を現実として受け止めねばならない。
ここからしか出発できないのだから。


イスラエル軍による空爆も批判されねばならない。
カッサム発射に責任を持つ者なのかどうか証明されていない。
もし証明したのだとしても容疑者にしかすぎない。
それを空爆で殺害すれば死人に口なしということになってしまう。
これは法治主義に基づく行為ではない。

しかし、イスラエルにも自衛権はあるのであって、
スデロットに数日間に百発程度ものカッサムを撃ち込まれ、
負傷者多数を出しているのであるから、
イスラエル政府としても何らかの対応をとらねば
自国民に対して無責任、自国民保護を行わないということになってしまう。
だから、一定の軍事行動をとるのであり、
あとは、それが過剰反応か、等価報復かという問題はあるが。
特に一般市民の死傷者に対しては全面的に非難されねばならない。

イスラエルのガザへの空爆や地上侵攻を非難するべきではあるが、
その前に、カッサム発射を先に非難せねばならない。

この両者には明確な因果関係があり、前後関係があるのだから。
①カッサム発射を非難し、
②それへの報復としてのイスラエル軍によるガザへの空爆と地上侵攻を非難する。
この二つの非難は切り離せないし、非難する順序もあると思う。

もし、片方だけを非難するのなら、それは片手落ちであり、
特定の政治的立場に基づくプロパガンダだと思う。

もし、カッサム発射を非難せず、不問に付し、
イスラエル軍の攻撃だけを非難する者がいれば、
それは、政治技術主義の賜物だ。
何の説得力もない。


そもそもスデロットという街に残っている人々は、
どういう人々だと思っているのだろう。
他所へ引っ越す経済的余裕のある人達はとっくに引っ越してる。
現在残っている人達は、
何らかの思想的、宗教的確信を持っている人達か、
引っ越す経済的余裕のない人達、
そして地価も住居費も低下したスデロットに新たに入って来た人達は、
貧困層であり、それはイスラエル社会で最も最底辺で喘ぐ人々、
つまり、アラブ系ユダヤ人や、
イスラエル系アラブつまりパレスチナ人もいるのだ。
そういう意味では、パレスチナ人がパレスチナ人に向かって
カッサムを発射しているとも言えるのだ。


悲劇は何重にも重なっているのだ。

複雑なものの中にあって、単純なるもの、
それは、現在のガザに於いては、
ガザからのカッサム発射は、占領軍を追い出す反占領の戦いなどではなく、
その反対に、占領軍を呼び戻す役割しか果たさない挑発行為であり、
そんなものは、反占領闘争ではないということだ。

イスラエルによる軍事的、経済的封鎖
イスラエルへの協力者の存在
アメリカのファタハへの経済的、軍事的支援

これらは全て外的条件だ。

外的条件だけで説明すれば、それは還元主義的誤謬だ。

自己否定的でなければならない。

外的条件だけで内部抗争を説明することは、誤謬であるだけでなく、
パレスチナ民衆への侮辱だ。
外的条件だけで踊らされる愚かな人々だということになってしまうからだ。

そんな屈辱的なことを自ら否定しなければならない。

極言すれば、外的条件などどうでもよいのだ。

パレスチナ内部の問題をパレスチナ内部で解決すればよいだけの話だ。

しかしそのパレスチナ内部の問題の解決方法が間違っているということだ。

(「「内ゲバ」の深層」田原牧「軍縮地球市民」No.8 P.212)
「誰がファタハなのか」
しばしばこの問いが話題になった。
ある人々は苦笑いし、別の人々は沈黙した。
今回の抗争に反発する市民の多くもまたファタハなのである。

ハマスに銃口を向けたファタハは、ダハラーニィン(ダハラーン支持者)だという。
麻薬や武器密輸にも関与する二つの大家族だという。

現在は旧指導者層が消え、社会的な抑止力も働いていないといえる。
その底流にはパレスチナ社会の世代交代、社会的な変動が重く横たわっている。

・自然発生的な第一次インティファーダ世代
・アラファト独裁の後遺症

「抗争の原因はイスラエルによる閉鎖にある」という発言に対し、
「演説はもういい。我々の無力さをこそ検証すべきだ」

街角には殉教した息子を持つ両派の母親同士が手をつなぎ、
抗争停止を訴えるポスターが貼られていた。

PFLP,DFLP,イスラム聖戦の活動家達は文字通り体を張り、
抗争現場で両派の間に丸腰で飛び込んで停止を訴えたという」

私は、ここに、反占領闘争の腐敗、堕落を超克する実在的可能性をみる。
西岸各地での抗議集会も行われている。
囚人文章という理念は既にある。
http://www.ngy1.1st.ne.jp/~ieg/06/3/palestina-j.htm
その担い手も実在している。

反占領闘争再甦の理念も担い手も、一般市民の支持も存在している。
反占領闘争再甦の実在的可能根拠は既に存している。


(NHKきょうの世界 5/18)
中東調査会主席研究員中島勇氏は、
ファタハは昨年の選挙前、内部選挙を行い、中堅・若手が選挙に出るべきと
訴えたが、実現せず、選挙敗北後にも、未だに党組織改革が
全く行われていないので、中堅・若手は不満を昂じさせており、
武力を持つ中堅・若手が党中央の統制を全く受け付けない。
「語弊はありますが、必要であれば、内戦のような激しい戦いを経ても、
中央権力を確立するというプロセスは否応なしにやってくるかもしれません」


(アルジャジーラ)5/18
「イスラエルの攻撃はスデロットの住民が
避難所で一夜を過ごした翌日に行われたものです。
スデロットにはロケット弾が次々と着弾し、負傷者が増加しています。
この為、数百人が『オルメルト首相に放置された』と不満を述べながら、
安全な場所へと避難しました。
『政府は七年間何もしませんでした。
我々は捨てられた犬みたいなもんです。
誰も私達に関心を持ってくれません。
私達のことなどどうでもいいんです』


(BBC 5/19)(PHYLLIS BENNIS:Institute for Policy Studies)
「アメリカは、四千万ドルを拠出して
ファタハの戦闘員をエジプトなどで訓練しています。
武器も供与しています。
非常に深く関与しています。
イスラエルとアメリカは証拠がないにもかかわらず、
軍事的な勝利が可能だと考えているのです。
これによって暴力が激化することは間違いありません。

これは明確にしておく必要がありますが、
イスラエルは、ガザ地区から撤退した訳ではないのです。
入植者と兵士がガザの領土から離れただけなんです。
イスラエル軍はガザ地区を完全に支配しています。
ガザへの人も物資の出入りも全てイスラエル軍が管理しています。
軍がガザ地区の上空を管理し、
ガザ沿岸の海域も規制しています。
ガザ地区は空港の建設も港の建設も認められていません。
ですからガザは完全にイスラエルの管理下にあるのです。
大きな監獄と言った人もいます。
こうした絶望感が広がっています。
世界銀行の報告によると、ガザ地区の人口の87%は国際的な貧困基準である
一日二ドル未満で暮らしているという結果が出ています。
この為にこうした絶望感が広がり、ロケット弾攻撃が激化しているんです。
イスラエルが本当に攻撃を終わらせようとするのであれば、
国際法に従い、占領を止めるべきです」

ガザ混乱――内紛/抗争なのか?
http://palestine-heiwa.org/note2/200705190948.htm


Fatal missile strike hits Gaza (VIDEO 2:05)
http://news.bbc.co.uk/player/nol/newsid_6670000/newsid_6675100/6675149.stm?bw=nb&mp=wm
「モヤさん一家はスデロットに十年間住んできました。
しかし出て行こうとしています。
原因はこれです。
ガザ地区から発射されたロケット弾が近くのガソリンスタンドに着弾しました。
そしてもう一発が自宅の直ぐ近くにも着弾します。

近所のクチニクさんは息子達の安全を確かめようとしています。
(HANITA KUCHNIK)
『二人の息子が心配です。
今日はここ、明日、あるいは一時間後には私の家かもしれません』


これがイスラエルの返答です。
ガザ地区を空爆しています。
ロケット製造者が目標だといいます。
しかし人口が密集するガザ地区では、罪のない人々も巻き込まれてしまいます。

ムハンマド・ドーレさんは、娘の玩具を拾っています。
命は無事でした。
しかし家は破壊されました。
隣にある武装組織の建物をイスラエル軍が攻撃したのです。
(MOHAMMAD DOLEH)
『子供や普通の人にどういう関係があるんです。
イスラエルはそんな人達を傷つけるべきじゃない。
パレスチナの組織もロケットを発射する前に考えるべきです。
イスラエルの報復で市民 が傷つくのだから』


境界線を挟んで、こちらのイスラエル側でも、後ろのガザ地区でも、
住民達は意味のない危険な攻撃の応酬の板挟みの犠牲になっています。
問題の原因には何のメスも入らないまま、
人々の命が脅かされているというのです。

Gaza Voices: Where are we headed?
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/3D75EC48-471F-47EE-9E22-02CE7EE7BF7F.htm

Attacks strike terror in Gaza and Israel
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/6671909.stm

How people live in the Israeli town of Sderot (VIDEO 1:11)
http://youtube.com/watch?v=JfWw7YE0B6M

Hamas bombs Sderot (VIDEO 2:54)
http://youtube.com/watch?v=4FjRSCy_yTM

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コメント

>IOFが平和維持軍というのは、何かとてつもなく難しい冗談なのでしょう。

冗談でも何でもありません。
ファタハ・ハマス間の武力抗争を唯一止めたのは、
イスラエル軍の侵攻ですから、
平和維持軍の機能を果たしたというのは、客観的事実だと思いますが。


貴方は、ガザでのファタハとハマスの武力抗争を止めたのは
一体何だと思っているのでしょうか?

四度停戦合意が行われ、それぞれその数時間後には破綻したこと。
つまり、パレスチナの大統領にも、首相にも、内相にも
誰にも止められなかったこと。
エジプトにも、アラブ連盟にも、国際社会にも誰にも止められませんでした。

一体、何が止めたというのでしょうか?

ガザでのファタハ・ハマスの武力抗争の真っ最中に、
スデロットに突然一日に30から40発のカッサムを発射しだしたのは、
一体何故だと思っているのでしょうか?

それまでは、週平均10発、それも更に減少傾向にあったというのに。

ハマスがカッサムを突然一日に30から40発発射する前に、
イスラエルはガザで軍事行動でもとったというのでしょうか?

イスラエルは、ファタハ・ハマスの武力抗争なんて、
もっとやってくれ、もっと殺し合ってくれと思っていた筈です。
イスラエルがガザに軍事攻撃を加える理由などありません。

>2005年9月にIOFがガザ地区を「撤退」したあとに、
>IOFは一般人に向けて攻撃を続けていました。

私は、イスラエル・パレスチナ間のガザでの停戦合意以降のことについて、
論じているのですが、
それをイスラエルの「ガザ撤退」にまで話を広げる意図は何ですか?

私には、話を摩り替えているとしか思えません。

イスラエル・パレスチナ間のガザ停戦合意は、
・パレスチナ側が提案し、
・パレスチナの大統領と首相が保証し、
・合意数時間後には、カッサムが発射され、
それ以降も、ほぼ毎日のようにカッサムは発射され続けました。
パレスチナ側による一方的な停戦合意違反です。

しかも、イスラエルは、それに対して、数か月間は、
ガザには、軍事攻撃を加えないという『余裕』まで見せました。


私は、ただ唯一、真実に近づきたいのです。
だから、私の書いたことに、
誤りがあれば、それを指摘して頂ければ、
心から感謝致します。

事実関係であれ、分析であれ、
誤りを指摘して頂ければ、心から感謝致します。
しかし、貴方の今回の御指摘だけでは、
残念ながら、何も得るものはありませんでした。

投稿: 妹之山商店街 | 2007.05.27 18:20

2005年9月にIOFがガザ地区を「撤退」したあとに、IOFは一般人に向けて攻撃を続けていました。

http://rafah.virtualactivism.net/news/todaymainmain.htm
に経緯が記録されています。

IOFが平和維持軍というのは、何かとてつもなく難しい冗談なのでしょう。

投稿: 通行人 | 2007.05.27 09:56

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