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2006.11.24

市民も非暴力直接行動という反占領闘争の担い手です

確かに、一般市民を戦闘に巻き込んではならないと思います。
しかし、このテーゼを絶対的なものとして、
超然としていてもよいのかという疑問があります。
少なくとも、生きた現実との関係で考察せねばらならないと思います。

つまりガザでは、既に一般市民が戦闘に巻き込まれることが日常化しています。
イスラエルの空爆は、確かに目的意識的に
特定の目標を攻撃しているとは思います。
しかし、それは、意識上は、つまり主観的には、ということです。
客観的には、その空爆の多くにおいて、周囲の一般市民をも巻き込んでいます。

一般市民は、確かに保護されねばならないと思います。
しかし、パレスチナの一般市民は、既に十二分に被害を被っています。
そして、何より、一般市民であると同時に、開放闘争の担い手でもあります。
解放闘争は、何も武装闘争だけではありません。
非武装の直接行動もまた解放闘争の一形態です。
空爆予告を受けた家屋に大挙して結集し、空爆を阻止するというのは、
立派な反占領闘争の一翼、非暴力直接行動だと思います。

しかもパレスチナでは、非武装のデモですら、死傷者を生み出されます。
実弾で、ゴム弾で。
11月3日には、女性だけのデモ隊に発砲され、
二人が射殺され、十数人が重軽傷を負っています。
ですから、今回の人間の盾も、結果として、今の所成功しているのであって、
命掛けの行動だったと思います。
何故それが可能なのか。
どういう気持ちで、馳せ参じたのか。
その個々人の内面にまで立ち入らないといけないのではないか。
何故そこまでできるのか、その可能根拠は何か。

ただ、私個人としては、ガザからのカッサムロケット攻撃は、絶対に反対です。
効果が少ないとかという問題ではなく、たとえ効果が少なくとも、
それは、無差別テロなのだからです。
スデロットの一般市民を標的にしているのですから、断じて許せません。
相手側一般市民を無差別に攻撃しておいて、
自分達の側の一般市民への攻撃を非難するとは、それ自身論理矛盾しています。
占領地の占領軍に対する軍事的攻撃は、テロではありません。
レジスタンスです。
イスラエルのリヴニ外相もそう認めています。

アンケートにおいてもパレスチナの61%は反対しているようです。
また、ハマスもカッサム攻撃を停止する用意があるとも声明しています。
私個人としては、「受刑者の提案」に基づき、
・1967年のラインでニ国家共存を目指す
・武装闘争は、イスラエル本国での一般市民は標的にせず、
 占領地での占領軍に対する攻撃だけに限定する。
という内容で、ファタハ、ハマス、聖戦、PFLP等までも
まとまりつつあったように認識しています。

六月末にイスラエルへの越境攻撃を行ったパレスチナの勢力は、
この合意を、パレスチナ内部から崩壊させる為に、
越境攻撃を行ったのだと私は受け止めています。
パレスチナ諸勢力が、上記の合意内容で固まり、
ほぼ合法的な闘争へと収斂されてしまうことに、
危機感、不利益を見い出す勢力によって行われたのだと解釈しています。
例えば、パレスチナ人がイスラエルに虐げられ続けている方が、
反イスラエル、反シオニズム、アラブの大義を掲げることによって、
自国内部の矛盾を排外的に外部に逸らせることに利益を見い出す独裁者達とか。
現状維持にむしろ利益を見い出す諸勢力。
等々、、、


もう一度、仕切り直して、改めて、上記の内容で合意して
そういう内容でパレスチナの統一戦線を結成し、
独立国家建設を達成して欲しいと思っています。


ちなみに、イスラエルが言うところの、テロリストですが、
それはイスラエルが一方的にそう主張しているだけです。
つまり、正確には、
「イスラエルが主張するテロ容疑者」です。
イスラエルの主張に立ったとしても、「容疑者」です。
それをいきなり空爆で爆殺するということが、
一体「民主主義国家」を自称する国の
どういう法的根拠があるのか理解できません。
またたとえ、「イスラエルの法的根拠」があったのだとしても、
その適用範囲は、「イスラエル国内」の筈ではありませんか。

しかも問題は、更に、
①周囲の一般市民をも巻き込むということと、
②イスラエルは、それを事前に重々承知している
 ということです。

事前に警告することは、肯定的に評価できます。
しかし、全面的に賛美することもできません
一つには、10分前なり、30分前なりに警告すれば、
その一切の責任を免除されることにはなりません。
愛着のある自宅を10分後なりに破壊すると一方的に通告されて、
本人は一体どういう気持ちになるでしょうか。
また、病人や障害者などいた場合、十分に逃げ出す余裕があるでしょうか。

そもそも、家屋を空爆するという場合、
①その人は容疑者にすぎない
 つまり、その罪が客観的に証明されていない。
②しかも容疑者本人だけでなく、家族や隣近所の人達まで巻き込んでしまう。
 一体、イスラエルの法体系においては、容疑者本人以外への被害は、
 どういう位置づけになっているのでしょうか。
 まさか、「連座制」などという封建遺制に立脚しているのでしょうか。


On human shields (and Human Rights Watch)
http://justworldnews.org/archives/002238.html

Human Rights Watch versus Gandhi
http://xymphora.blogspot.com/2006/11/human-rights-watch-versus-gandhi.html

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コメント

ジェニンの件ですが、イスラエルや第三者による調査の結果、犠牲者数が誇張されていたり、メディアが証言者の裏を取ってなかったりで、いわゆる「虐殺」はなかったと欧米主要メディア数社は後で訂正を発表しています。日本のメディアも小さく訂正を出した社があったと聞いていますが、グーグルで検索してもでてきませんでした。(英文で恐縮ですが、日本語では報道されなかった「事実」が書かれています)

http://www.weeklystandard.com/Content/Public/Articles/000/000/001/218vnicq.asp

http://www.tomgrossmedia.com/Jeningrad.html

犠牲者数を比較することは、事実に一面を明らかにすることに過ぎません。例えばイスラエルでは各家屋に設置が義務付けられているシェルター(防空壕)のおかげで、先のレバノン戦争の犠牲者が少なくてすんでます。即ち国民の安全保障に国がどれほどコミットメントを持っているかの差だと思うのです。自治政府は世界中から今まで70億ドルものの無償援助を受け取っていますから、いくらアラファト議長の不正蓄財が明るみになっても、インフラ整備の金がないという言い訳は通じません。人命に対する根本的な考え方が違うのでは?(こちらも参考にどうぞ;http://www.youtube.com/watch?v=t_B1H-1opys

>無関係な一般市民を多数死傷させておいて、「遺憾に思う」で終わりですか。

今まで遺憾の意を表明してきたのは、イスラエル側だけじゃないですか。パレスチナ側は遺憾どころか、いつも抵抗運動で殺人を正当化する一方。それが成功した日には街頭でお祭り騒ぎ。パレスチナ側が要望する90%以上が実現するはずだったオスロ合意を蹴り、念願のガザ撤退を撤退した今、一体何に対する「抵抗」が正当化されるというのでしょうか。

投稿: oopie59 | 2006.11.26 15:16

現在ガザから発射されているカッサムロケットについては、
私は無差別テロだと認識しています。
ですから絶対反対です。

イスラエルが家屋爆撃時のその全てに必ず事前通告しているかどうかは
私は知りませんが、その多くには事前通告はしているようです。
<イスラエルは目的意識的に対象物に限定しようとしている>
ということは認めますよ。
それは、カッサムとの対比に於ける<区別性>です。
しかし無関係で、非武装の一般市民にまで死傷者を出している
という意味においては、<同一性>を有しています。

<主観的には意図している>、その通りです。
だからといって、その結果に責任がない訳ではありません。
その結果、<客観的事実>として、多くの一般市民に死傷者を出しています。
それについては、謝罪することもありますね。
無関係な一般市民を多数死傷させておいて、「遺憾に思う」で終わりですか。
それで、相手はどう思うと思いますか。

また、七月のガザ侵攻以降の被害者数については、
・パレスチナ側は、死者約四百人、重軽傷者数千人
・イスラエル側は、カッサムによる市民の死者二名、重軽傷者数十人、
 兵士の死者三名?
これも一つの客観的事実ですね。


>イスラエル人の命はパレスチナ人の命より安くなければならないのですか?

上記の数字を見て、普通の感覚を持つ人なら、
「パレスチナ人の命はイスラエル人の命より安くなければならないのですか?」
という感想を持つのなら、私は理解できるのですが、
この数字に対して、正反対の意見を持てる感覚が、私の理解を超えています。


>戦争中なのですから、

イスラエル政府とパレスチナ自治政府、どちらがどちらに宣戦布告したんですか。


>パレスチナ側はジェニンでも、女子供をわざと爆弾を仕掛けた家屋に残した
>事実もありましたね。

そうですか。それはどこに記載されているのでしょうか。
是非お教え下さい。

もし事実なら問題だと思います。
2002年のことでしょうか。もしそうなら、
国連は、ジェニンに調査団を送ると言っていたのですから、
是非国連に調査してもらって、全世界にその真実を公表すべきでしたね。
では、何故イスラエルは国連の調査団を拒否したんですか。
全世界に真実を公表されては困るのは、誰ですか。
調査を拒否した側ではないかと、普通は考えるのではないですか。


>イスラエル軍が完全撤退した後もなおロケット弾を打ち続け、
>兵士まで誘拐するパレスチナ側の意図は何かを問うことが先ではないですか?

その通りです。
ガザ撤退後のカッサム発射には何らの正当性もないと私は考えています。
パレスチナ側にも大いに問題があります。
ところで、ガザ撤退後にパレスチナ側が
一方的にカッサムを発射した訳ではありません。
イスラエルは、ガザ撤退後もガザで暗殺攻撃を続けていました。
パレスチナ側に言わせれば、それへの報復であって、一理あります。

ガザに侵攻してくるイスラエルの空軍、陸軍に攻撃することは、
テロではありません。レジスタンスです。
イスラエル本国の一般市民への自爆攻撃は自爆テロですが、
パレスチナ領内に侵攻してきた軍に対する最近の女性二人の自爆攻撃は、
テロではありません。自爆攻撃です。

パレスチナは国家ではありませんが、国連にオブザーバー権を持ち、
アラブ連盟は一加盟国として扱っています。
まあ半国家、将来的には国家、近未来的には国家、国家を目指しつつある国家、
というところでしょうか。

本来なら自国領土へ侵攻してきた敵軍隊に対して戦うことは
当然の自衛権の行使です。
しかし軍事力の圧倒的な力関係の差から、
真正面からはなかなか立ち向かえないという条件があります。
私はカッサムには断固反対ですが、
パレスチナ側の数少ない抵抗手段であることもまた確かです。

イスラエル軍機は、本来なら、領空侵犯しただけで、
撃ち落されても何の文句も言えないのです。
にもかかわらず、あたかも当然の権利であるかのように、
ほとんど毎日領空侵犯し、無人偵察機で恒常的に監視し、
いつでも好きな時に、軍事侵略できるのです。

いつでも好きな時に、他国に軍事侵略できる、且つ実勢に実行している。
そんな国家は、他にこの地球上にありますか。
あったら是非お教え下さい。

オルメルト首相は、よく「イスラエルにも自衛権はある」と述べています。
その通りです。
それは同時にパレスチナにも「自衛権はある」のです。
パレスチナに侵攻して来るイスラエル軍に対して戦うのは自衛権の行使です。

私個人的には、
パレスチナは対空ミサイルを堂々と購入すればよいと思っています。
自国領に侵攻してくる敵軍を攻撃するのは自衛権の行使です。
ですから、対空ミサイルは、防衛の為のものであり、
侵略の為のものではありません。
日本もパトリオットをそういう理屈で購入しています。
パレスチナにも迎撃ミサイルを持つ権利があります。
何故できないのかが私には理解できませんが。

イスラエルは自国領空に侵犯してきたヒズボラの無人偵察機を
全て?撃ち落しました。
それはイスラエルの自衛権の行使で、それに対して誰も文句を言っていません。
しかしイスラエルは、レバノンとパレスチナには
無人偵察機や、有人戦闘機を恒常的に飛ばしています。

こういうことは、私には、アンバランスと感覚されます。
不公正、不平等と感覚されます。

投稿: 妹之山商店街 | 2006.11.25 21:47

市民が巻き込まれて死傷者を出すいう事象は同じでも、初めから意図的に市民を狙っているパレスチナと、市民の犠牲をできるだけ避けようとする(家屋爆撃の際は事前通告しています)イスラエルとは戦闘に対する姿勢が違います。戦争中なのですから、誤って罪のない市民が犠牲になるのは残念ですが、ある程度仕方のないことではないですか?パレスチナ側はジェニンでも、女子供をわざと爆弾を仕掛けた家屋に残した事実もありましたね。イスラエル人の命はパレスチナ人の命より安くなければならないのですか?

市民の犠牲者や人間の盾よりも、イスラエル軍が完全撤退した後もなおロケット弾を打ち続け、兵士まで誘拐するパレスチナ側の意図は何かを問うことが先ではないですか?今まで散々ガザ解放を訴えてきてやっと手に入れた「自主自立」ではなかったのですか?


投稿: oopie59 | 2006.11.25 08:25

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