「ヒズボラ:脅威の戦闘能力」NHKきょうの世界
(江畑謙介:拓殖大学海外事情研究所)
「ゲリラ戦を起こさせない為に、地域住民に反発を招き、
行動できなくさせる。
イスラエルはその為に空爆でインフラを破壊した。
しかしそれがかえってレバノン国民の反発を買い、
ヒズボラに支持を与えてしまった。
これが最初の大きな失敗。
イスラエルの情報網の失敗でもあるが、
ヒズボラが非常に強力な武器を持っていた。
それを効果的に使用した。
国家が持つような強力な武器をゲリラ組織が持つ。
これはいままでになかった例。
新しい戦争の形」
(青山弘之:アジア経済研究所)
「現時点では、イスラエルは外交的にはそれなりに勝利を収めたが、
軍事的には大敗を喫した」
(江畑謙介)
「まず情報で失敗した。
どういう武器を持っていて、どのような形で攻撃してくるのか分からなかった。
ヒズボラは世界が予想しなかった高性能な武器を持っていた。
地対空ミサイル、中国製のC-802対艦ミサイルなど。
ヒズボラという国家ではない組織が、持っていて、ちゃんと使えて、命中した。
相当な組織力、装備。
イスラエル軍の犠牲者の多くが対戦車ミサイル、
多くはロシア製で、しかもこれはイランが持っていない。
シリアから渡ったのではないかと推測されている。
国家以外の武装組織でこれだけのものを持っているのは聞いたことがない。
中国製の対艦ミサイルはイランに渡っていることは分かっていた。
ただヒズボラにまで渡っているとは分からなかった。
確認はされていないが、イラン革命防衛隊がヒズボラの組織の中に入っていて、
運用を支援した、ないしは中心となって行っていた可能性もある。
そうすると、レバノン南部で行われた戦い自体が、
純粋なレバノン武装組織対イスラエルではなくて、
背後にイラン、シリアがいる代理戦争の形をとっていた可能性もある。
確かに現在闇市場で、お金さえ出せば相当なものが買えるのは事実です。
しかしそれを買った所で、ちゃんと動かせるように、
使えるようにするには、相当な訓練がなければならない。
それができたということ。
しかもそれがかなりの数が入っていたということ。
このようなやり方は今後新しい形の戦いになる可能性はある。
今までに例がないことなので、これにどう対応していいか、
今の所、世界は方法を見い出せていない」
(青山弘之)
「ヒズボラがイラン、シリアから経済的、軍事的支援を受けているのは確実。
ただそれをもって、ヒズボラがイラン、シリアの傀儡と断言することは
必ずしもできないのではないか。
何故かというと、
ヒズボラは基本的に二つの原則に基づいて動いている。
一つはレバノン国内で政治的影響力を拡大する。行使する。
もう一つは対イスラエル闘争を有利に進める。
この二つの戦略の下に活動している。
この二つの戦略そのものにイランがコミットしても
イランは何らメリットを得られないし、そうした能力もないだろう。
イランはヒズボラを傀儡として中東紛争に介入するのではなくて、
ヒズボラが独自の意思を持って行う戦闘行為、政治行為を利用する形で
アメリカと対峙したりという戦略を採っている。
対米関係においては外交のカードとして」
(江畑謙介)
「国家としてのインフラを持っている訳ではない。
例えば軍事工場を持っている訳ではない。
大きな訓練キャンプがある訳でもない。
そういう組織があれだけの兵器を使いこなせるということは考え難い。
相当統制がとれている組織。
停戦を守っている。
普通、ハマスとかもそうですが、必ず停戦に反対して、跳ね上がり、独走が
出るんですが、全くないというのは、相当に統制力がとれた組織である。
今までなかった。
あるいは一国の軍隊以上ですね。
軍隊の中でも停戦に反対してということはありますが、
今の所、ないということに驚いたですね、凄い組織だと」
(青山弘之)
「おそらくイランがヒズボラにコミットしている以上に
シリアにとってヒズボラは重要だし、
ヒズボラにとってもイラン以上にシリアが重要だと思います。
というのは、シリアはイスラエルに対する前線国家という立場。
しかし軍事的にはイスラエルに劣っている。
そうなると、誰か他の国、他の組織に軍事的な行動を行ってもらう必要がある。
ヒズボラ側からみても、外交交渉を行う政治団体ではないので、
国際社会で後押しする、支持する、そういう役割を持った政治アクターが必要。
それがまさにシリアが果たしている最も主要な役割。
戦争当初、ヒズボラの行為は冒険だと批判してきた
エジプト、サウジ、ヨルダン等の親米国家は、
国民の意思に反して、国際社会でどういう舵取りをしていくのか、
想像以上のインパクトをもたらしている」
(江畑謙介)
「国連派遣軍、寄せ集めの軍隊では統制がとれない。
それはボスニアやアフガニスタンで実証されている」
(青山弘之)
「政治問題、軍事的対立を最終的に解消するには、
何故戦闘、戦争が起きたかという根本に立ち返って
問題解決の方法を探る必要がある。
イスラエルによる占領。
占領に対する抵抗運動」
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