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2005.01.01

イスラエル国民の全てがシャロンの政策を支持している訳ではない

 イスラエル国民の全てがシャロンの政策を支持している訳ではない。
イスラエル国民のおよそ半数はシャロンの政策を支持していない。
パレスチナの独立、入植地の返還を支持している。
野党労働党をはじめ、たくさんの平和団体がイスラエルに存在している。

もちろん残りのイスラエル国民の約半数はシャロンの政策を支持しており、入植
地も返還しなくてもよいと考えている。
 最も急進的な部分はパレスチナ全土をイスラエルのものにしてしまえと考えて
いる。

 イスラエルは国民皆兵・徴兵制を採っている。
ここ数年、「選択的兵役拒否者」が増えている。
二千人を超したそうだ。
「選択的兵役拒否者」とは、国を守る為に兵役には就くが、パレスチナでの兵役
は拒否するというものだ。
 パレスチナ人に対する行為に加担したくないという意思表示だ。
二千人は少ないかもしれないが、潜在的支持者は、その数倍はいるだろう。
 人口600万人のイスラエル。人口一億二千万人の日本に換算すると、二千人
は、その20倍、つまり、4万人になる。
 日本の軍隊の4万人が「選択的兵役拒否者」となれば、その社会的影響は如何
ほどだろう。
 勿論、日本は徴兵制ではないので、直接的アナロジーはできないが。
ちなみに、「選択的兵役拒否者」は9ヶ月程度の懲役刑となる。

 アメリカのユダヤ人は伝統的に民主党支持だ。
 アメリカのユダヤ人の多数派は、実は、シャロンの過激な政策を支持していな
い。勿論、その少数派はシャロンの政策を支持しているが。
つまり、<アメリカのユダヤ人多数派>と<シャロンの政策>は同じではない。
<ブッシュのイスラエル政策>もまた同じではない。
この三者をきちんと区別することも必要であると思う。

 また、パレスチナの多数派も武力一辺倒とは言えない。
現在のパレスチナでは、<PLO>と<ハマス>が勢力を二分している。
民衆が<ハマス>を支持するのは、その「武闘路線」を支持しているというより
も、ハマスの手厚い民政努力に負うところが大きい。
 パレスチナでも「イスラエルへの帰還を断念」し、その代わりに「パレスチナ
国家」を樹立するという穏健な路線も支持を広げつつある。
その努力は、イスラエルの穏健派とも現実に相互に協力しつつ推し進められてい
る。

 アメリカ国民だって意見は割れている。
日本国民だって意見は割れているのと全く同じだ。

 だから、「日本人一般」など存在しないのと同様に、「アメリカ人一般」、
「イスラエル人一般」、「パレスチナ人一般」などは存在しない。
違う意見の国民が相互に存在しているのだ。
ただ、<現政権を担う勢力>は、存在する。
しかし、相互に反対派も内在するということを忘れてはならない。

 また、イスラエルは2000年を転換点として経済がマイナス成長へと転落し
た。膨大な軍事占領費用が最大の原因だ。
また、一時期好調だった観光収入も激減してしまった。当然だと思う。
だからこそイスラエル人の約半数は、そんな不経済で、自爆テロに脅え、兵役拒
否者まで出して、もうそんなことは止めろと考えている。

 しかし、人口増大、失業者の増大という問題を抱えている。
シャロンは、その問題を解決する方策を入植地を増やすことに見出している。
しかし、これでは何ら問題の解決にならないばかりか、経済的にだけ言っても、
不経済である。
 是非とも、次の選挙でシャロンを落として欲しいと願っている。
 
 イスラエルとパレスチナ、半世紀を越える怨念の連鎖は、そう簡単には解決し
ないだろうとは思うが、イスラエル兵役拒否者の存在は、「怨念の連鎖を断ち切
る」実在的可能性の一つではあると思う。

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