「有志連合村」米新戦略 (NHK)
(2006.5.10)NHK
「有志連合から派遣された連絡官達が勤務する仮設住宅
戦争が終われば直ぐに解散する筈でした。
今アメリカは、有志連合を恒久的な組織に変えようと動き始めています。
アメリカが描く有志連合の新たな戦略とは何か
フロリダ州タンパ、メキシコ湾に接するリゾート地
アメリカ中央軍司令部にある有志連合村
63か国から連絡官が派遣されています。
日本も陸海空の各自衛隊から一人ずつ連絡官を派遣
アメリカのアフガニスタンやイラクでの作戦を支援しています。
連絡官の主な任務は中央軍司令部から直接情報を収集して本国に連絡し、
その上で各国との調整を行うことです。
司令部のビルにある会議室で米軍は毎日、各国の連絡官に
イラクやアフガニスタンでの作戦について、ブリーフィングを行います。
このブリーフィングを受けて、各国はどのような協力ができるのか検討し、
アメリカに申し出る仕組みです。
(海上自衛隊江之口譲一佐)
『日本政府はインド洋での洋上給油を継続することを決めました』
しかし取材が許されたのは冒頭部分だけ。
機密を保持する為にカメラ取材も限定されます。
有志連合はあくまでも一時的な枠組みです。
アフガニスタンやイラクでの戦いが終われば解散する、
それを前提に各国の連絡官はこれまで仮設の建物で勤務してきました。
米国防総省は今年二月QDRを発表し、
テロとの戦いを「長い戦争」と位置付けました。
これを受けて、中央軍司令部は、敷地にビルを建設する決断に踏み切りました。
今年の夏にも有志連合の連絡官を仮設住宅から新たに建設するビルへと移します
長い戦争に備えて、有志連合を恒久的な組織へと発展させる思惑が潜んでいます
(米軍グレコ大佐)
『長い戦争に向けて有志連合をどう活用するか検討中だ。
有志連合は恒久化され、中東だけでなく、
世界的な問題に対処していくことになる』
有志連合村は中央軍司令部の中にある為、
その活動範囲は中央軍の管轄に限定されています。
しかしアメリカはこうした地理的概念をなくし、
有志連合で世界中どこでもテロ組織と戦える態勢作りを検討しているのです。
しかし有志連合村に参加している国々は、
一体いつまで、そしてどこまでアメリカに協力すればいいのか、
見通しが立っていません。
(海上自衛隊江之口譲一佐)
『アメリカが恒久化していく考えがあると思いますが、
私の個人的な意見としては、今後、国連との関係はどうするのかとか、
今のアメリカが扱っているグローバル・オン・テロリズム、テロとの戦いを
どのように各国が位置付けるか、こういった多くの課題があると思います。
これらの課題については、政治等の高いレベルで話される問題と
私は認識しています』
(オーストラリア連絡官)
『中央軍の管轄内では有志連合はうまく機能している。
将来については、情勢の変化を見極める必要がある』
長引くテロとの戦いに向けて、
日本など各国からの協力を長期間にわたって引き出したい。
アメリカは自ら主導する有志連合を恒久化する構想を着実に進めたい考えです。
(中央軍キミット准将)
『更に多くの国々の参加を期待している。
世界的な有志連合の構築がアルカイダと戦う最善の方法だからだ』
<アメリカが言う地球規模の問題とは具体的には何を指すのか>
<各国はこうした米戦略に一体どこまで協力できるんでしょうか>
(大越健介記者)
9.11以降、テロとの戦いが米の至上命題となりました。
テロとの戦いは多くが予測が困難で、
世界のどこでも起こり得るものだと位置付けています。
だからこそ世界のどの場所でも機動的に対応できる
有志の連合体が重要だと認識するようになったのです。
しかもアメリカは、テロとの戦いが
これから長期間に及ぶことは避けられないとみています。
有志連合をできるだけ、安定的、恒久的なものにしたいという米戦略は
こうした所からきています。
これに対して、有志連合に参加する国々の事情は、
その国の法律上の制約や地理的条件などによって様々です。
武力行使まで協力できるとする国もあれば、
日本のように、協力は後方支援や人道支援に限定されるという国もあります。
ラムズフェルド国防長官は、今年夏にも、
有志連合のこれからのあり方についての方針を打ち出すことにしています。
各国とも米政府の方針が定まるのをじっと見守っているのが実際の所です。
<有志連合が更に強化されれば、アメリカは安全保障の問題を国連よりも>
<有志連合の枠組みで解決する傾向が一層強まるということか>
その可能性は大いにあると言っていいでしょう。
アメリアからすれば、大国の利害が複雑に絡み合う国連は、
事態に機敏に対応する能力に欠ける上、超大国アメリカといえども、
主導権を握る為には膨大な外交努力が求められますので、
国連は割に合わないという想いが政府や議会に鬱積しています。
それに引き換え、アメリカを頂点とする、
いわばこの指止まれ方式の有志連合は
アメリカにとって、まさに使い勝手の良い枠組みですから、
アメリカが今後、この有志連合により比重を置くことは十分に考えられます。
しかし有志連合が強化され、恒久化されていけば、
国連との整合性をどうとるかという問題に突き当たり、
アメリカの突出を警戒する国際世論が高まることも考えられます。
有志連合に参加している国々の中からも、
アメリカが主導するテロとの戦いにより深く、固定的に組み込まれることを
嫌う国が出てきても不思議ではありません。
<有志連合を強化する動きは日本にどんな影響を与えそうですか>
日本はアメリカの安全保障戦略の中で、
より広範囲で積極的な役割を求められそうです。
安全保障面での日米関係は、これまで
アメリカが日本を守るという構図だけで捉えられがちでした。
しかしアメリカからすれば、テロとの長い戦いに勝ち抜く為には、
各国の協力がどうしても必要です。
日本に対しても、共にテロと戦う有志として、
一層の協力を求めたいというのが本音です。
先月末に最終報告がまとまった在日米軍の再編協議でも
日米の連携強化を望むアメリカの意思ははっきりと示されています。
日本側の基地の負担を軽減する一方で、
日米の司令部機能や基地の共有、共同訓練などが進み、
日本はアメリカの安全保障戦略により深く関与する方向ができつつあります。
(ローレンス国防副次官)
『日本が自発的に行える範囲で、
グローバルな役割を担うパートナーになってもらいたい。
その為に自らどう行動すべきか、日本は重要な判断の岐路に立っている』
冷戦が終結し、テロとの戦いがアメリカの安全保障戦略の中心となって以降、
日本は自衛隊の役割と任務を拡大させることで
アメリカと共同歩調をとり、同盟関係を深めてきました。
アメリカは同盟国日本がこれからも有志連合の重要な一員であり続け、
世界各地に活動を広げてくれることを期待しています。
強まるアメリカの期待にどう向き合うかが日本に問われています」
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