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2005.03.29

キルギス「元側近が語る政変の裏側」

 「元側近が語る政変の裏側」
  NHKBS(2005.3.28(月)放映)

 日銀出身の田中哲二氏は、1993年から二年間、IMFからキルギスに派遣される
形で、キルギス中央銀行最高顧問としてキルギスの経済運営にあたり、
その後もアカーエフ大統領の経済顧問を務めました。
 議会選挙後23日までキルギスにいて、24日は隣国カザフスタンにいました。

「南部で軍・警察まで反政府側に立ったと聞いて、今までよりエスカレートして
 いると感じた」
「キルギスは山国で北部と南部の間に大きな山脈があるので、その山脈を越えて
 デモ隊が北上する、軍・警察が南へそれを抑えに行くのは、雪解けを待たない
 とないのではないかと思っていた」
「ところが、これだけ早く事態が進んだというのは、軍・警察が反政府側に
 付いたということが、事態を加速させてしまった」

「私達が今直面する課題は法に従って政権移譲を行うことだ」 
(テケバーエフ議会議長)

 自警団の創設により略奪行為は収まりつつある。

「バキーエフ氏は実務家肌の有能な官僚、行政能力はある」
「クーロフ氏は、独立前の旧軍の参謀総長で、軍・警察に睨みの利く人」
「人気のあるクーロフ氏を大統領、実務能力のあるバキーエフ氏を首相という
 のが、現時点でベストのセレクションではないか」
「1992年頃から、米国系の民主化支援団体が入り込んでいてずっと活動をして
 いたので、今回もその人達が相当に活躍しただろうということは類推するに
 やぶさかではない」

 <アカーエフ政権の15年間>
・ソ連崩壊直前、共産党候補に圧勝して大統領就任
 「中央アジアで最も開明的な指導者」
・市場経済導入、価格自由化、土地私有を許す、独自通貨導入
・IMF勧告に従い、緊縮財政を敷き、インフレ抑制
 「中央アジアの優等生」(IMF)
・1998年WTO加盟(旧ソ連の国としては初めて)
・米軍駐留基地

・2000年、憲法の三選を否定
・貧富の格差が広がり、国民の六割は貧困層

 田中氏は、
「90年代後半からは、経済成長が進まない、隣国カザフやウズベクと比べて
 国民生活水準が上がらない、国民に不満が鬱積、軍・警察の強化で強権的に
 反政府勢力を抑える」
「部族主義:アカーエフ氏は部族の代表でもある。一族の経済的利権拡大要求に
 Noとは言えなかった」

「キルギスの政変は『民主化』という帽子をかぶっているが、
 その実体は封建的な地縁血縁のグループ間の対立が原因だ」
(ロシアの政治評論化ミヘーエフ氏)


 <私の感想>
 キルギス周辺国:カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、
トルクメニスタンはいずれも10年~15年という長期独裁政権です。
 政治的、経済的、文化的等々、むしろキルギスより後進的であり、
強権度・独裁度は遥かに高いそうです。
 キルギスより強権度・独裁度が高い故に、反政府活動は芽の内に摘み取られて
いるそうです。
 皮肉と言えば、皮肉な結果とも思います。
長期的には、中央アジアでも『民主化』の波は避けられないとは思いますし、
肯定的には評価します。
 石油・天然ガスという資源があり、経済的には、それなりに成長を遂げいて
いる国と、そうでない国とでは、経済的条件が違うという一つのモメントの違い
もあるとも思います。
 <カスピ海石油資源争奪戦>というモメントもあると思います。

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コメント

 コメント有り難う御座います。

 丁度今日、岩波新書の新刊「多民族国家中国」という本を買ってきました。

 中国農村部からの億単位の『余剰労働力』の都市部への流出。
低賃金で、劣悪な労働条件だと聞いています。
まるで勃興期資本主義の「囲い込み運動」(Enclosure Movement)を
彷彿とさせる農村から都市への労働力の『創設』
中国についてもっときちんと勉強せねばならないと思っています。

 アムネスティ・インターナショナル制作のビデオ
「未来をください」~戦火の中の子どもたち~28分(3000円)
 http://www.amnesty.or.jp/shop/web_store.cgi

 パレスチナ、アフガニスタン、チェチェン、チベット、
の難民等の様子を描いています。

・パレスチナの少年の虐殺
・イスラエルの少女のハマスによる虐殺
・アフガニスタン難民へのインタビュー
・ロシア法務省は16000人の子供達が64の拘禁施設に入れられていると
 発表しました。
 一見して十代前半と分かる少年達が収監されている映像と
 生々しい拷問の痕の映像もありました。

 チベットの尼僧ガワン・サンドルさんも登場します。
15歳の時、平和的なデモに参加しただけで逮捕され、
2002年、アムネスティの活動により釈放されたと述べられていました。

尼僧チュキ・クンサンさんも平和的なデモに参加しただけで逮捕され、
弁護は一切許されませんでした。
「ありとあらゆる拷問を受けました」と証言しています。

尼僧ガワン・ワンドゥンさんは、アムネスティ日本の招きで来日し全国各地を
講演。彼女もアムネスティの活動で釈放された一人です。


 パレスチナ、アフガニスタン、チェチェン、イラクには、確かに本物の
テロリストも存在します。
 しかし、9・11以降、「対テロ戦争」の名の下に、「テロとの戦い」という
名の下に、実際に行われていることは、何なのでしょう。

 実際には、一般市民達こそが、数多く死傷させられているのではないで
しょうか。

 米・露・中の政治権力者は、自らに都合の悪い存在に、「テロリスト」という
名を被せ、「対テロ戦争」という何の下に結束しています。

 これは政治的御都合主義の産物以外の何物なのでしょうか?

・ロシアにとってのチェチェン
・中国にとっての新疆ウイグル自治区やチベット
・アメリカにとってのアフガニスタン、イラク
・イスラエル、アメリカにとってのパレスチナ

 米露中の政治権力者は、自らにとっての「反政府勢力」などを「テロリスト」
だと決め付け、多数の一般市民をも死傷する自らの軍事行動を正当化しています。

投稿: 妹之山商店街 | 2005.03.30 23:23

はじめまして、
田中哲二元顧問のキルギス解説、アップ有難うございました。大いに参考になりました。こういうのは地上波でも放送してほしいですね。
田中顧問や人質事件で知られるキルギスですが、去年はデュオのキロロが訪問して話題を呼びました。
さて、中央アジアの独裁体制といえばもうひとつ、東のほうに・・・・・。ほとんど語られることはないのですが。

投稿: kok | 2005.03.30 21:48

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ラジオフリーヨーロッパサイトにキルギス、新疆ウイグル関係についての記事が載っていた。 http:// [続きを読む]

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