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2005.03.19

「永遠のハバナ」フェルナンド・ペレス監督

実際にハバナに暮らす12人の日常を淡々と描いたドキュメンタリー映画。
街の音と音楽だけで、ナレーションもインタビューも一切ない。
30万人が劇場に足を運びました。

・障害児を育てる父親
・物売りの老婆
・豊かさを求めてアメリカに旅立つ若者の姿。
・革命時の演説をテレビで無表情で見つめる老婆

エピローグでは、映画に登場した人物の夢が綴られます。
・父の夢「決して息子から離れない」
・祖母の夢「孫が自立できるよう導くこと」
・渡米した男の夢「家族を呼び寄せること」


フェルナンド・ペレス監督は、
「観客は映画のスクリーンの中に自分達の姿が映し出されていると感じた」
「映画の中で年老いた女性が無表情でテレビの革命演説を見ているシーンが
あります。
革命直後の演説がいかに自信過剰なものであったかを伝えたかったのです。
演説は、私達が今いる現実の社会を語るのではなく、理想の社会について
延々と語っているのです。
革命直後のキューバでは、人々は自発的に国旗を持って政治集会に参加して
いたものでした。
しかし今では、その行為も形式的なものに変わってきていると思います。
私はまるで振り付けられたように旗を振る人々の姿をを見ていると不安に
なります。
政治的な演説は今後ますますダイナミックさを失い、機械的に繰り返される
だけの儀式になってしまうのではないかと不安になるのです」
「革命後の60年代は素晴らしい時代でした。
誰もが平等で公正な社会を達成するんだという夢を抱いていました。
当時私は歴史は真っ直ぐに進むものだと信じていました。
しかし、現実は、私が望むようにはなりませんでした。
私はキューバの将来に希望を持っています。無償の医療や教育。
革命が達成したさまざまな社会的成果がいつまでも守られていくことを
願っています。
同時に、今の社会を活性化させる為、柔軟な考えを持って、既存の制度を
見つめ直して欲しいと思います」

現代企画室編集長太田昌国氏は、
「官僚主義を批判する映画も作られた。
そういう多様化の果てにこの映画も作られた」
「世界情勢が変わって、一体自分達のあの熱狂は何だったんだろうと
捉え返さざるを得なくなっている」
「カストロが国際的に果たしている、経済格差を批判したり、第三世界が何故
債務を抱えているかということに対する批判は正しいだろうけれども、
もっと国内の矛盾について率直に語らなければ、高揚期のような革命的な演説
だけで酔いしれている状況では、庶民自身がなくなっているという暗黙の批判
が込められている」
「どんなに現状に批判的な観点を持っていようと、革命世代の人々は、革命が
もたらしたメリット、プラス面もたくさん感じ取っている、経験してきている
第三世界に対する医療援助、自分達で開発できたエイズ治療薬を安く分ける
とか自己犠牲的な政策を一貫して採っている。
国際的な連帯心、国内的な貧しさの平等、そういうものに裏付けされた精神が
世界的なグローバリズムの動きの中で失われていくのは、耐えられない」

 革命への期待を依然として抱いているが、うまくいかない現実とのジレンマ
複雑な気持ち

 そういう監督のメッセージをキューバ国民も肯定的に受け止めているから、
この映画がヒットしたのでしょうね。


<参照>
The Man of Two Havanas
http://ima-ikiteiruhushigi.cocolog-nifty.com/gendaisekai/2007/08/the_man_of_two_.html

キューバ新政権の規制『緩和』
http://ima-ikiteiruhushigi.cocolog-nifty.com/gendaisekai/2008/04/post_9121.html

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受信: 2005.04.30 17:48

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