民主主義革命の輸出 民主主義基金(NED)
「民主化の〝伝道師〟が語る世界戦略」
NHKBS(2005.2.18(金)放映)
NED(National Endowment for Democracy):アメリカ民主主義基金
アメリカの国家予算です。年間約四千万ドル。
NED代表カール・ガーシュマン氏
共和党、民主党、労働界、財界のNGO、現地のNGOに資金を提供。
かつて冷戦時代にはCIAなどの情報機関が中南米などで反米的な政権の転覆を
目指す反共工作を行いました。
こうした活動への批判を受け、民主化支援に透明性を持たせようとNEDは、
1983年につくられました。
政府からは独立した機関として政府の外交政策とは距離を置いて各国の支援に
当たってきたとするガーシュマン代表は、
「ウクライナでは、グルジア等の周りの国から活動家が手助けに来ました」
「グルジアの政権交代を支えたのは、セルビアの活動家達でした」
立教大学教授伊勢崎賢治氏は、
「仮に、民主主義を広めることに普遍的な価値があったとしても、対象国の
ある特定の政治グループもしくは個人を、資金力をバックにした外部の力が
支援することは、立派な内政干渉」
「内なる力を支援した、頼まれたからというのは、詭弁。本音ではありません」
「民主化支援は、レジューム・チェンジの為の内政攪乱工作と紙一重」
「アフガニスタン大統領選挙で、民主党系のNDI=アメリカ民主党国際研究所が
公正な選挙を行う為に、選挙監視を行ったことは評価しなければならない」
「彼らは事実良い活動をしました」
「政府から多大な公的資金を受けている限り、米政府の外交政策から独立して
いるとは、絶対に言えない」
「例えば、タリバンとは一切妥協せず、民主化プロセスから外すという米外交
政策が大前提。これと対照的な例が、シエラレオネ」
「50万人以上の一般市民への大虐殺の首謀者である反政府ゲリラの指導者
サンコー氏に完全恩赦を与え、副大統領に任命、反政府勢力を一野党として
迎え入れるという裏外交」「部分的に成功」
「世紀の大犯罪者に恩赦を与えることで、国内、国際社会に人権に関するモラル
の崩壊という問題を起した」
「民主化支援に普遍的な価値があるという主張の一方で、時の米政権の意向に
よって、ダブルスタンダードをつくるという現実がある」
「民主主義を育む土壌や社会システムをつくるという神聖な国際支援が、
果たして米政権にとって都合の良い政治グループや個人を台頭させるという
政治工作行為とどれだけ一線を画するか」
ブッシュ大統領は、NEDへの予算を今後増額することを明らかにしています。
議会からは、予算の内、増額された分は、重点的に中東などに振り向けて、
より積極的にかかわっていくことが求められています。
ガーシュマン氏は、
「エジプトもウクライナの状況と似てきました」
「支援活動をしていないのは、G7の中で日本だけです」
「中国や北朝鮮がより民主的になれば日本にもメリットがあります」
伊勢崎氏は、
「ブッシュ政権にとって、後に引けない状況であることは事実だと思います」
「先に進む唯一の活路は、中東民主化路線を、いかに国際化するか、つまり、
国連を含め、国際社会全体の一枚岩性をどうやって演出するか、
それ以外の道はないと思います」
「民主化支援の国際ネットワークを強化するアイデアに反対する理由は全くない
しかし、超大国の権益が、弱い国家の民主化プロセスを翻弄する、これに細心
の注意を払わなければならない。
常に社会に存在する全ての政治勢力、規模が大きいものであれ、小さいもので
あれ、思想がどういったものであれ、隈なく光を当てる。
たとえ民主主義を看板に掲げていても、特定の勢力を支援するだけではなくて
全ての勢力間の対話の場をつくるということ。日本はこれを厳格に守るべき」
「変化の為の暴力なしに民主化が達成できるかが、日本にとって大問題」
「イラクのように暴力の後に達成される民主化って、一体何なのか」
「暴力の犠牲になるのは、いつも名もない一般市民、これをどう捉えるか」
「これを真正面に捉えるのは、侵略の為の武力行使を許さない平和憲法を持つ
日本に課せられた義務」
<私の感想>
かつて、ソ連圏が「革命の輸出を行っている」と非難してきた米国は、
今や、公然と「民主主義革命の輸出」を行っているのですね。
旧ユーゴで、日本の明石大使が、両勢力に公平に接しようと努力を重ねていた
ことに対して、セルビア寄りだとして、解任されたことを想起しました。
伊勢崎賢治氏が2004年12月に出版した「武装解除:紛争屋が見た世界」
(講談社現代新書)740円+税
という本を読んでいる途中なのですが、とってもユニークな本です。
東チモール、シエラレオネ、アフガニスタンで、現地の軍閥等から武器を
取り上げるという活動を行った、その現地での生々しい現実を叙述した本です。
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