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2006.10.22

Putin's Media War / ロシア社会と報道の自由(NHKBS)

Anna Politkovskaya: Russian Sadism in Chechnya

Putin's Media War (VIDEO 23:59)
http://jp.youtube.com/watch?v=v8Tc3uVOaag
http://video.google.com/videoplay?docid=6598411387536744034&q=Putin%27s+Media+War
Journyman Pictures:2005年3月29日

アンナ・ポリトコフスカヤの発言
15:13
I've written my will.
I'm gradually getting my children used to the fact that
at any moment they might be left without me.
They have all my instructions for that scenario.
私は遺書を書きました。
私は子供達にいつ何時私なしに残されるかもしれないという
事実に徐々に慣れてもらうようにしています。
子供達にはそのシナリオの為に私の全ての指示があります。

モスクワ劇場占拠事件
The president has to say it, publicly.
Not just sign some order, but say it.
They need his word, that he will end the war.
大統領はそれを公的に発言せねばなりません。
単に指令に署名するのではなく、発言して下さい。
彼らは、大統領が戦争を終わらせるという発言を必要としています。

ベスラン事件
I did everything I could to get Maskhadov over there.
The idea was to make it possible for him to get there
and persuade the bandits to let the children go.
That was my second role, apart from covering the events,
as every journalist should.
私はマスハードフが向こう(ベスラン)に到着できるように
私にできるあらゆることをしました。
私の考えは、マスハードフがそこ(ベスラン)に到着し、
山賊どもに子供達を解放するよう説得することを可能にすることでした。
それは、全てのジャーナリストがすべき、
事件を報道することとは別の私の二番目の役割でした。

I wasn't shocked,
I just felt that I didn't do what I had to do, that I was careless.
That I shouldn't have eaten or drunk anything
and then I'd have made it to Beslan.
私はショックを受けませんでした。
私がしなければならないことをしなかったこと、
私が不注意だったこと、
私は何も食べたり、飲んだりすべきでなかったこと、
そうすればベスランまでたどり着けたこと、
そんなことを感じただけでした。

This situation has arisen, beyond any doubt,
from stupid, fruitless and short-sighted policies,
including, first and foremost, those of Putin himself.
Those issues, of course, are never even mentioned.
疑いもなく、この状況は、何よりもまず、プーチン自身の
愚かで、実りのない、近視眼的な政策に起因しています。
このような問題は、もちろん決して言及されさえしません。

We are now at a critical point, at a point of transition.
Democracy will not be remembered in a year.
If democratic freedoms are preserved our press may yet recover,
but I find that scenario hard to believe.
私達は現在、転換の決定的な場面に立っています。
民主主義は一年後には忘れられているでしょう。
もし民主的な自由が保持されるなら、
私達の新聞はやがて回復するかもしれません。
しかし私には、そのシナリオは信じ難いと感じられます。

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「こちらは現在ロシアで発売禁止になっている本です。
邦題は「「プーチニズム」報道されないロシアの現実」です。

「どうして私はこれほどプーチンが嫌いになったのか。
人種差別、嘘、果てしない戦争
劇場占拠事件で使ったガス、
罪のない人々の虐殺のためだ
私は彼の政敵でも宿敵でもない
ロシアに暮らすただの一女性だ」

著者は十日前、何者かに殺されました。
鋭い政権批判と深い取材で知られたロシアの女性ジャーナリストの特集です。

モスクワで十日、彼女の葬儀が行われました。
享年48歳。
ジャーナリストで二児の母親でもありました。
小雨が降る肌寒い日にもかかわらず、
彼女の死を悼んで二千人を超える市民が参列しました。
『報道を暴力で抑えるなんて絶対に許されません』
『彼女は真実を伝えていたロシアの「良心」でした』

殺害事件が起きたのは今月七日。
モスクワの自宅アパートで何者かの凶弾に倒れました。

ポリトコフスカヤさんは、政権に批判的なロシアの新聞
ノーヴァヤ・ガゼータの記者でした。

チェチェン紛争でロシア軍による市民への拷問や誘拐など
人権侵害の調査報道を続け、プーチン政権を厳しく批判しました。

一方でロシアからの独立を目指すイスラム過激派も批判。
ロシアの失われた良心とも言われるようになりました。

2002年のモスクワ劇場占拠事件では、
チェチェン武装勢力から仲介役を指名され、交渉にあたりました。

2004年の北オセチアでの学校占拠事件の際には、
現地に取材に向かう途中、何者かに毒を盛られ、意識不明に陥りました。

危険と背中合わせの中で取材への意欲は衰えを知りませでした。
反チェチェン戦争の集会に参加、
プーチン政権のチェチェン政策を批判し続けます。
(反チェチェン戦争集会:2004年10月モスクワ)
『最悪なのはテロに対して反対する勢力が新たな戦争を起こすことです』

プーチン大統領は殺害事件の解決に向けた努力を約束しましたが、
事件を機にロシアでの報道の自由への懸念の声が高まっています。
『報道の自由を追求することは民主主義国家にとって重要だ。
そのためにも事件の徹底解明が必要だと伝えた』
(メルケル首相)

ロシアでの報道の自由は今どうなっているのか
モスクワからの報告です。

特集の冒頭で紹介したアンナ・ポリトコフスカヤさんの著作では
ロシアの暗い影とも言うべき部分が彼女のペンの力で暴かれています。
そして問題の元凶は旧ソビエトのKGB・国家保安委員会の諜報部員から
国家元首へと登りつめ、強い大国ロシアの復活を掲げるプーチン大統領
その人の政策にあると明確に主張しています。
ポリトコフスカヤさんは多感な時期を過ごした旧ソビエト時代の
人権弾圧や検閲制度の影をプーチン大統領の政治姿勢に感じ取り、
その危機感を誰よりも強く訴えていました。
そんな彼女はロシアの良心として敬意を払われていました。
しかしその一方で敵も多かったのは疑いありません。
何故今命を奪われたのか、ポリトコフスカヤさんの殺害について
モスクワ支局安間英夫記者が取材しました。

事件から二日後に出されたノヴァヤ・ガゼータ紙です。
見出しは「どの記事で(殺害された)?」
ポリトコフスカヤ記者がこれまでに書いた
政権側に批判的な記事が掲載されました。
先月七日の記事では、ウスチーノフ前検事総長の側近の検事が
チェチェンで頻発した市民に対する誘拐の捜査を曖昧にし、
検察内部でも、この側近に対する調査が始まったと伝えました。
そして重要な歯車となっているこの検事を前検事総長が匿っているとして
プーチン政権の下での検察当局の体質を批判したのです。

また先月11日に、チェチェン共和国で
親クレムリンのカディーロフ首相が指揮する警備隊が
内務省の検問に応じず、内務省の隊員に怪我をさせて逃げたことを告発し、
チェチェンの指導部の無法ぶりという症候群が広がっていると批判しました。

ポリトコフスカヤ記者が殺害される直前まで書きかけて、絶筆となった記事
「われわれ(治安当局)は、あなた(チェチェン人)をテロリストと呼ぶ」
二人のチェチェンの若者が拷問を受けている
ビデオを入手していたことを伝えました。
治安当局がノルマを達成する為、無実の若者を
テロリストだとして逮捕、拷問している。
そしてその若者達が治安当局に反感を持ち、
今度は本当にテロを起こすようになると告発していました。

ポリトコフスカヤ記者の所属するノヴァヤ・ガゼータ紙の編集部です。
チェチェンなどでの取材に同行していた記者は、
現地でも治安当局から妨害を受けていたこと、
そしてこれまでも様々なかたちでポリトコフスカヤ記者が
脅しを受けていたことを指摘しています。
『チェチェンで不当な逮捕繰り返したある警官のことを
書いた後、すぐに脅しが始まりました。
アパートの監視が必要となり、別のところに移ったら、
今回の事件が起こったのです』
(ノヴァヤ・ガゼータ紙イズマイロフ記者)

<欧米諸国の間ではポリトコフスカヤさんのプーチン政権に対する非常に厳しい
批判が今回の事件と直接関係があるのではないかという見方が広がっている
訳ですけれども、この点はどうなんでしょうか>

今の時点では手掛かりすら掴めず、全く特定できていないのが実情です。
ポリトコフスカヤ記者は週末の買い物を終えた後、車を自宅の前に止めて、
一度荷物をアパートに運んで、それからエレベーターで一階に降りて、
ドアが開いたところを狙われました。
犯人グループは以前から行動を把握し、周到に準備したとみられています。
これまでの所、防犯カメラに写された
事件直後に現場から立ち去った男の映像が公開されていますが、
複数の車に尾行されていたという目撃情報もあり、
警察では綿密に計画され、組織的な犯行、
背後に大きな勢力がいるとみて調べています。

<犯行理由ですけれども、今ロシアでは
具体的にどんな可能性が考えられているんでしょうか>

これまでの所、警察当局はあらゆる可能性があるとしています。
ただ考えられる背景は三つあると思います。
一つ目はチェチェンに関するもの。
ポリトコフスカヤ記者はチェチェンの現地政府、プーチン政権側の軍や治安機関、
そしてチェチェンの独立派の武装勢力も厳しく批判していました。
ポリトコフスカヤ記者は、親クレムリンの
カディーロフ首相の記事を多く書いています。
西側メディアを中心にカディーロフ首相との関連を指摘する見方も
出ていますが、カディーロフ首相自身はこれを否定しています。

二つ目は、民族主義的な組織の可能性です。
ロシア人の間で高まる民族主義を警告する記事も書いていました。
この為、ロシア人の民族主義を主張するグループのインターネットのサイトでは
ロシア人の敵として名前のリストが掲載され、
その中にポリトコフスカヤ記者も含まれていました。

三つ目は、プーチン政権を批判していた記者を殺害することで、プーチン政権の
イメージに打撃を与え、信用失墜を狙った可能性も挙げられています。
しかしいずれの可能性を裏付けるものは出ていません。

フランスのシラク大統領は遺族に弔電を送り、事件を非難しました。
米政府は事件の徹底した調査をロシア政府に要求しています。
『ロシア政府には女性記者殺害の犯人を捜し出すという
決意を示す重大な責任があります』(ライス国務長官)
欧米各国から今、ロシアの民主主義と報道の自由のあり方が問われています。

ロシアのジャーナリスト団体は、
報道の自由を攻撃する卑劣な事件だと受け止めています。
ソビエト崩壊後、ロシアで職務に関して殺害されたジャーナリストは
全国で40人以上に上り、その内13人が未解決です。
暴力だけでなく、政権や治安当局から年間50人の記者が
刑事事件の嫌疑をかけられ、五人が逮捕されているとしています。
暴力や政権側の圧力から記者を守るシステムが
機能していないと警鐘を鳴らしています。
『検閲や脅しという伝統が復活し、記者の中に自己規制が生まれています。
プーチン政権は「統一した情報空間」と呼ぶが
ソビエト時代のプロパガンダと何ら変わりはありません』
(ロシアジャーナリスト団体パンフィーロフ代表)

欧米の首脳が今回の事件直後に事件を非難する声明を発表する中、
プーチン大統領は三日後、訪問先のドイツでの記者会見で
この事件について初めてコメントしました。
『今回の殺人はロシア全体、そして政権に向けられたものだ。
確かに政権に厳しい批判をしてきた記者だったが、
周知のように政治や社会への影響は限られたものだった』

ロシア国内より、むしろ国外で有名だったポリトコフスカヤ記者
ロシアの主要全国テレビで名前が登場したのは、事件のニュースを伝えたのが
初めてで、それまで名前が出たり、出演したりすることはありませんでした。

ロシアではプーチン政権の下で、主要全国テレビが国営だったり、
国営企業の傘下に入るなど、政権のテレビに対する影響力が強まり、
欧米からは民主化や報道の自由が後退しているという批判が上がりました。
これに対してプーチン大統領は、
『ロシアにはロシアに根差した民主主義があるべきだ』と主張してきました。
テレビだけで全国で四千局、新聞や雑誌も四万に上り、
ソビエト時代とは違って、メディアの管理は不可能だと指摘しました。
『メディアを管理しているというが、私には違う情報がある。
テレビの国家の資本率は減っているし、メディアの数もますます増えている』

ロシアではソビエト時代から全国テレビのネットワークが発達し、
世論形成に大きな役割を果たしてきました。
これに対して新聞は購読制で部数が限られ、宅配制度も発達していません。
ノヴァヤ・ガゼータなど新聞がいくら政権批判をしても、
影響力は限られています。
『ソ連崩壊後、新たなジャーナリズムが始まる兆しはあったが、
プーチン大統領の就任以降、その兆しは消えてしまった』
(ロシアジャーナリスト団体パンフィーロフ代表)

今回の事件の反響が広がりを見せていないことに懸念する声が上がっています。
集会なども新聞の読者を中心としたモスクワの一部に限られ、
多くの人達とは事件に対する想いを共有できないというのです。
『この事件にどう対応するのかが重要だと思います。
この集会の参加者はわずか数百人です。
ロシア全体では何の影響もなく、多くの人が無関心で沈黙しています。
これこそ非常に悪い兆候なのです』
(テレビキャスター・ボズネル氏)

<ロシア国内では、彼女の殺害について少し冷めた見方をする人も多いように
見えるんですけれども、ロシアの世論はこの事件をどうみているんでしょうか>

ロシアの主要全国テレビは広大なロシアの全土の家庭に
電波を送るネットワークを持っていますが、
民間の新聞の発行部数は多いコメルサントでもせいぜい15万部です。
ノヴァヤ・ガゼータはモスクワを中心に1200部しかありません。
テレビは無料ですが、新聞はその都度金を支払って買わなければなりません。
ロシアのジャーナリスト団体が計測したところ、
主要全国テレビの夜のニュースの放送時間の内、
プーチン大統領、政府、政権与党の統一ロシアの占める割合が
93%に上ったといいます。
今回の事件もそうですが、ロシアの社会では今、
二つの考え方に別れているように思えます。
この大きな影響力を持つテレビを見て、プーチン大統領のもたらした安定や
プーチン大統領が進めるロシア流の民主主義を支持する人達。
その一方で、新聞をよく読み、政権に対しても批判的な精神持つ
インテリゲンツイアの流れを汲む人達。
今回集会などを取材して、前者が多数派を占め、
後者が少数派となっているのを感じています。

<プーチン大統領は大国ロシアの復活を目指す中で、
「法の独裁」という言葉を使って、秩序の確立を重んじている訳ですけれども、
ただ今回の事件も含めて、一連のロシアで起きているジャーナリストの殺害など
みてみますと、報道の自由を含め、民主的な社会の根幹である秩序の安定という
ものが十分確立されていないという印象があるんですけれども>

その通りだと思います。
ロシアでは敵対する人をプロの殺し屋に委託して
殺害したとされるケースが後を絶ちません。
先月にはマネーロンダリングを厳しく取り締まっていた
中央銀行副総裁が暗殺されました。
不正と敢然と戦って犠牲となりました。
事前に行動を把握した計画的な犯行でした。
昨日三人の実行犯が逮捕されたと発表されましたが、
この実行犯は仲介者を通じて殺人を依頼され、副総裁だったことを知らず、
事件が報道されて反響が広がったことから、自分達も殺されると思い、
恐くなって自首したといいます。

プーチン大統領はロシアに根差した民主主義の形が
あるべきだと主張してきました。
しかし記者や銀行家が卑劣な銃弾の犠牲になるという事件が
止まらない現状はプーチン政権の弱さを表していると言えます。
ロシアでは殺人を依頼した組織や個人が特定されるケースは殆どなく、
こうした卑劣な犯罪を助長しています。
ロシア流の民主主義か、欧米流の民主主義か、
ロシアがどのような民主主義を進めるかは、議論の分かれる所ですが、
多くの記者が殺害され、一向に減る兆しを見せず、
実行犯が捕まらないという現状が改められなければ、
ロシア流の民主主義を主張しても意味がなくなってしまいます。

ロシアのジャーナリスト団体は、きちんと取材して記事を書いても、
特に地方では、脅されたり、暴力を受けたりすることもあり、
正確な報道をすること自体が勇気を求められ、
また危険になりつつあると話していました。

ロシアの新聞に政権などに批判的な記事が出ていることは、
ある意味で救いになっていると私は考えていました。
しかし多様な意見が脅しや銃弾で抹殺され、それが許容されるのは、
同じ記者としてやり切れない想いがしています」

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