「死を賭して報じるチェチェンの悲劇」:アンナ・ポリトコフスカヤ
「死を賭して報じるチェチェンの悲劇」:アンナ・ポリトコフスカヤ
(月刊現代11月号)
モスクワ劇場占拠事件で、武装勢力から交渉役に指名された
ロシア人ジャーナリスト・アンナ・ポリトコフスカヤは、北オセチアの
現地に向かう飛行機の中で、何者かに毒物を盛られました。
幸い一命は取り留めましたが、現地には辿り着けませんでした。
劇場占拠事件の時、ロシア軍の撤退を要求する武装勢力に対し
て、妥協案として、「全面撤退ではなく、チェチェンのどの行政区域
でもいいから、ロシア軍が撤退を始める。その動きを第三者が確認
した時点で人質を解放するというものでした。
この妥協案を犯人たちは受け入れました。」
<私が温めていた解決策>
「今回私が温めていたのは、犯人グループがチェチェン独立派の
マスハードフ大統領と会談するよう仕向けることでした。
マスハードフ大統領が犯人グループと会う意思があることを確認
しています。マスハードフ大統領は犯人グループに対して、まず
子供たちから解放するよう申し入れるはずだったのです。」
「マスハードフはロシア政府が自身の身の安全を保証しなくても、
ベスランに行って犯人グループと交渉する用意がある」と
メッセージ
「特殊部隊と犯人側との衝突そのものは、いわば偶発的に起きた
ものと推測されます。しかし衝突の遠因は、人質の家族たちに
学校内部の情報が隠蔽されていたことです。そのため業を煮や
した住民たちが武装して現場に乗り込んでしまい、悲劇を生ん
だのです。」
<犯人とアルカイダは無関係>
ロシア当局は、実行犯の中にアラブ人が10人いたとか、
アルカイダ等の国際テロ組織が関与と発表していますが、
犯人グループと交渉し、26人の人質を解放させた
アウシェフ元イングーシ共和国大統領は、
「犯人は訛りのないロシア語かカフカス訛りのロシア語を話した」と
言っています。
つまり、犯人グループは、ロシア人、イングーシ人、チェチェン人、
オセチア人のいずれかということになります。
「チェチェン人にしてもイングーシ人にしても、戦闘員の多くは、
前述のフィルター・ラーゲリ(簡易強制収容所で拷問が行われて
いる)からの帰還者です。蛮行がさらなる蛮行の連鎖を生んで
いるのです。」
「チェチェン問題は、暴力的弾圧ではなく、政治的交渉によってのみ
解決します。マスハードフ大統領一派と話し合いを持つことです。」
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